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2005.07.12

万里の長城に向かう列車
中国鉄路に乗ってみよう!第17話

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「万里の長城」
もっとも有名な世界遺産のひとつで、唯一宇宙から確認できる人工物とも言われている世界的に有名な名所。
初めて中国に来たならば、やはり「万里の長城」は見てみたい。

「万里の長城」はその名のとおり全長1万里を越える城壁で、中国国土を東西に6,350KM貫いている。
観光で訪ねやすい長城として、北京市内から約70km北部に位置する「八達嶺長城」が有名で、多くの日本人のイメージにある「万里の長城」は、ここでの写真や絵であろう。

北京からこの「八達嶺長城」を訪ねるに一般的なのは、バスである。
様々なツアーバスも出ているし、ひとりでツアーに参加するのは気が引けてしまう人でも、路線バスで行くことが出来る。
どちらも便数は豊富にあるようで、北京市内から気軽に行ける観光地である。

ところがこれを列車で行こうとすると大変なことになる。
中国鉄路には、その名もずばり「八達嶺」という駅があり、北京から定期列車も走っているのだが、運転本数はなんと1日1往復しかない。
しかもガイドブックなどを確認すると、バスなら1時間~1時間30分程度で行けるところを、列車は2時間30分もかけて走っている。
こんな鉄道事情では、一般の観光客は間違えなくバスで「八達嶺」を訪ねるだろう。
しかしながら私は列車に乗ることがメインで旅行をしている以上、やはりこの1日1本しかない万里の長城に向かう列車に乗ってみようと思った。

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「八達嶺」行きの列車は、「北京北駅」から出発する。
上海からの直達特快が到着した「北京駅」からは、地下鉄を使って移動する。
中国鉄路の「北京駅」に乗り入れる地下鉄2号線は、北京の中心部に建つ故宮から一定の距離をおいて北京市内をぐるりと回っている環状線で、その中にある「西直門駅」が、中国鉄路の「北京北駅」との乗換駅になっている。
地下鉄の切符売り場は上海ほどではないがやはり混んでいた。
料金は一律3元(約39円)であるが、自動券売機などは一切なく、窓口でおばさんが100枚ぐらいの切符が束になったものから、1枚づつもぎりながら売っている。
改札も当然有人で、乗客から出された切符の半券をちぎっていた。
上海地下鉄の反復使用可能なプリペイド式の切符と比べると、時代的に約30年のギャップを感じてしまう。
電車も上海のに比べると古さを感じるが、ホームも車両も非常に綺麗に保たれており乗客も上品。
上海では地下鉄のマナーの悪さに呆れたが、北京の地下鉄はとても快適に乗ることが出来た。

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中国鉄路「北京北駅」との乗換え駅「西直門駅」に着き、構内の案内板に従い「A」出口から地上へと駆け上がった。
しかしいざ出てみると遊休地が目立つとても広い場所なのだが、どこにも中国鉄路の駅らしきものはない。
遊休地の向こうには高架式の綺麗な駅が目に付いたが、それは地鉄13号線という最近出来た郊外電車の駅であった。
地下鉄の出口に背を向けると、右手奥へ車1台が通れる程度の道が目に付いたので、とりあえずその道を少し歩いてみると、すぐに「北京北駅」と書かれた案内板を見つけることが出来た。
しかしながらこの案内板。地下鉄の出口からは全く見えない方向に掲げられている・・・

案内に従い「北京北駅」に向かって道を進んでいると、列車が着いたのだろうか?途中から多くの人とすれ違うようになった。
道の舗装はとても悪く、雨上がりということもあり、ぬかるんでいる。道の両脇にはタクシーや白タクと思われる車や自転車タクシーが沢山止まっており、運転手が大きな声を張り上げ客引きをしている。
客を捕まえたタクシーは今度はクラクションを鳴らしながら人垣を掻き分けて進んでいく。
その喧騒の様は、昔テレビなどで見た中国の風景に近かった。
駅へと向かう道路の途中、右手に少し大きな店構えの建物が見えた。沢山止まっているタクシーもこの建物から先には入れないようだ。通り過ぎながらこの建物をよく見ると入り口に「北京北駅售票処」と書いてあるのに気がついた。
「售票処」とは中国語で切符売り場のことである。
早速道を戻り、溢れんばかりの人で込み合っている切符売り場に入り、壁に掲げられている時刻表を確認した。

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「八達嶺」に向かう列車は、「沙城」行きの7173列車。北京北駅を9:10に出発する。
時刻表には終着駅までの料金が乗車クラスごとに記載されているが、「沙城」行きの列車には硬座(普通席)にしか料金の記載がない。
中国鉄路の硬座といえば、緑色の客車に超満員の乗客が乗っている印象が深く、その乗客の一人に自分がなれるのか少し不安であったが、ここまで来て引き返すわけにも行かない。

切符売り場の窓口は、4~5ヶ所ありそれぞれに長い列が出来ていて、私もその列のひとつに並んだ。
なぜか自分の列だけ進みが悪く、更には窓口の直前になって、平然と割り込みがあるなど、中国の文化を肌で感じながら、窓口のおばさんにたどり着くまで15分程度かかった。
おばさんに、中国鉄路のWEBサイトから印刷した「沙城」行きの7173列車の時刻表にある「八達嶺」に丸をつけて渡すと、難なく切符を購入することが出来、ホッとする。

私のとって初めて自分で買った中国鉄路の切符である。
切符はコンピュータ発券のもので、「北京北→八達嶺」と大きく印字されているほか、日付、列車番号、そして硬座なのに丁寧に座席番号まで指定されていた。値段は4.5元(約59円)。
ちなみに駅構内で売られているペットボトル入りの清涼飲料水が3~5元程度であることを考えると、2時間30分も列車に乗ってこの値段なのだから凄く安い。
切符売り場から「北京北駅」の本駅舎までは更に数百メートル進む。道の両脇には庶民的な食堂が立ち並び、列車からから降りてきた人たちを店員が誘い込んでいる風景を横目で見ながら歩く。

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やっとたどり着いた「北京北駅」は、一言で言えばとてもローカルな雰囲気の駅。
いままで見てきた「上海駅」や「北京駅」とは比べ物にならないほどこじんまりとしている。
駅前にはちょっとした広場があり、屋根に「北京北駅」と書かれた駅本屋らしき建物が正面に立っているが、中には小さな売店しかなかった。
駅本屋の右手には列車待合室らしきところがあるのだが、屋根はあっても壁はなく屋外である。手荷物をX線検査するための機械が置いてある施設もあったが、X線検査機を使用する様子はない。
改札口は、駅本屋両脇にある背の高い大きな緑色の鉄門で、改札前の扉が閉まっている時は、列車はもちろんプラットホームも外からは一切見えない。

「沙城」行きの改札が始まったのは、出発の約20分ほど前。
多くの人に紛れ鉄門の改札をくぐると、昔ながらの緑色の硬座車両がホームに横付けされていた。
お世辞にも綺麗とはいえない緑色の車体は、2時間前まで最新の直達特快の車両に乗っていた目から見れば、そのギャップは恐ろしく大きい。
列車は6両編成程度で先頭に青いディーゼル機関車が連結されている。改札に近い後方の車両は結構な乗車率だったが、前の方の車両はガラガラであった。
こんな古い車両を連ねた普通列車でもきちんと号車ごとに乗務員が立ち乗客を出迎えている。
私は指定された2号車の前に立つ乗務員に切符を見せ車内に入り、指定された座席に腰をおろした。
この硬座車両は、進行左側が6人ボックス席、右側が4人ボックス席となっており、座席は緑色のビニール製。空調などはもちろんなく、天井に申し訳ない程度の数の扇風機が回っていた。1両あたりの定員は118名とのこと。
こんな古ぼけた車両でも車体側面に記載されている最高速度は120Km。さすがは大陸の鉄道である。

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「沙城」行きの7173列車は、定刻9:10に「北京北駅」を出発した。
左手には地鉄13号線の線路が並行する。あちらは軌道周辺が高いフェンスで囲まれ、外部からの進入を許さない構造となっている。開通まもない綺麗な線路の上を走るハイカラな電車と、こちらのオンボロ列車と比べると大きな歴史の差を感じる。
「沙城」行きの7173列車も頑張って100km程度のスピードは出すものの、駅に到着すると無駄に停車時間が長い。
私の乗っている2号車は「北京北駅」出発時はガラガラだったが、途中駅に停車する度に乗客が乗り込み、9:51に到着した4つ目の「沙河駅」で、私のボックスにも母親と男の子二人が座った。
彼らは切符は持っていなかったようで、巡回に来た車掌から切符を直接購入していた。
つまり座席指定などは、普通列車ではあってないようなもので、私が「北京北駅」で買ったコンピュータ発券の切符にある座席番号などは、何も守る必要はなかったみたいだ。
「沙河駅」を出発すると今まで左に寄り添って走っていた地鉄13号線も姿を消し、より郊外の風景になってくる。
車窓には、山羊や牛、更にはアヒルなどの家畜が見れるようになり、車内にもハエが何匹か飛び回るようになるが多くの乗客はあまり気にならないようである。
時には戦車を積んだ貨車とすれ違い、中国のお国事情を垣間見たような気がした。

10:15。「南口駅」に到着した。
「南口」は大きな街のようで「北京北駅-南口駅」間の区間列車も日に数本存在する。「沙城」行きの7173列車も「南口駅」で10分停車したほか、多くの乗客が入れ替わり車内は混雑してきた。
北京出発時、小雨気味だった天気も回復し気温も上がってきたので、空調のない硬座の車内は段々と蒸してくる。
「南口」を出発すると列車は進路を山の方角に進み、やがて山岳路線のように山をゆっくりしたスピードで登り始めた。
車内では乗務員がワゴンを引いて車内販売に忙しい。カップラーメンが良く売れる。購入者には車掌が大きなやかんでお湯を注ぎ、車内にカップラーメン独特の匂いが充満する。 このお湯はカップラーメン購入者だけでなく、希望すれば乗客の誰もが分けてもらえる。

山岳区間に入った最初の停車駅では、ホームは1両分しかなく、先頭の機関車に近い2号車は大きくホームから離れて停車した。後のホームを見ると短いホームに乗務員が立っていた。
中国の列車はその構造上、停車中はトイレの使用が中止されるので、列車が止まりそうになると車掌がトイレに来て鍵を閉めて歩く。
そのトイレに出入りした乗客の若い女性のひとりに、スケスケの紫のワンピースをはおり、中の下着がはっきりと見えてしまう、ちょっと変った服装の人が印象に残っている。あれはファッションだったのか? それとも間違えて着ていたのか?ちょっと不思議なコーディネイトであった。

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しばらくすると進行左側の車窓に、長城が見えてきた。
山頂から麓にある大きな関所まで立派な城壁がつながっており、生まれて始めて見る万里の長城に目を奪われてしまう。
これは「居庸関(きょようかん)」と呼ばれる長城で北京から一番近い長城なのだが、残念ながら中国鉄路には最寄り駅はなく車窓から眺めることしか出来ない。
しかしながらこの「居庸関」を過ぎた後、車窓の左手には山頂つづく城壁をしばらく楽しむことが出来る。

さていよいよ「八達嶺」が近づいて来る。
車内では乗務員が沢山集まり拡声器を使って乗客に向かって何かを語り始める。
中国語のわからない私には、車内の様子から次のようなやりとりが行われていたように勝手に想像した。

乗務員:「みなさん。これから八達嶺に観光ですか?」
多くの乗客:「そうでーす!」
乗務員:「皆さんがこれから訪ねる八達嶺を紹介したオリジナルのパンフレットを車内限定で販売しています。このパンフレットには・・・・・」

女性乗務員が拡声器で宣伝放送をしている間、ほかの乗務員は車内を巡回し、手に持った万里の長城が描かれたガイドブック、オリジナルの帽子を乗客に見せて回っている。なかなか商売熱心である。

線路の勾配は更に厳しくなり「青龍橋駅」に到着した。
ここは「八達嶺」のひとつ手前の駅だが、厳しい勾配のため列車はここでスイッチバックを行い八達嶺へと登る。
先頭の機関車が切り離され、自分の乗っている車両の真横を通りぬけ、列車の北京側に再び機関車が連結されると、進行方向が逆となり、再び山に挑むと10分程度で「八達嶺駅」に到着した。

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「八達嶺駅」では、半分以上の乗客が下車し、山間の小さな駅は、瞬く間に観光客で溢れる。
駅は列車のすれ違い設備を持っているが、ホームに屋根は一切なく、駅本屋も閉鎖され窓にはベニア板が貼られておりとても営業中の駅とは思えない。
不安な様子の駅ではあるが、ホームには「八達嶺」と書かれた駅名票が立っているので、目的地には間違えないようである。

私は多くの乗客の流れに従い駅の外に出る。
目の前の道路は「八達嶺」観光に訪れる車やバスが多く走っていて、更に向こうには高速道路の出口も見える。
「八達嶺」へは駅前の道路を左に進み、緩やかな坂を自動車に注意しながら自らの足で登っていく。
しばらくすると大きな交差点にぶつかり、お店などが並ぶいかにも観光地らしい賑やかな場所に出る。
ここは北京からの路線バス(919系統)の発着所にもなっており、緑色のマイクロバス停車している。
中国鉄路と違いこの路線バスは新しいタイプの車両が使用され、もちろん空調も完備されている。運転本数も非常に多いので、北京市内から八達嶺への観光は、このバスの利用が一般的で、列車などで来るのはよほどの物好きしかいないだろうと我ながら思う。


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「両替について思うこと」
 異国へ旅行するのが好きで、年2回は異文化に触れに日本を飛び出している。東アジアや東南アジアは日本円がそのまま現地通貨に両替できることが多いのだが、そこで困るのが日本円の紙幣の最低額が1,000円であることである。1,000円両替すると結構な額になることが多く、財布がふくらんででしまう。また結局余った1,000円に満たない現地通貨は空港で菓子でも買って使い切るしかないのである。
 硬貨がこれだけ流通しているのは世界でも珍しいようだ。やはり世界に冠たる自動販売機文化のなせるわざか。私は欧米には行ったことがないのだが、1ドル硬貨を見た人は幸運だと言う話を聞いたことがあるし、チベットに行った際は1元硬貨は店で受け取ってもらえなかった。おかね=紙幣というのが世界では多数を占めているのだろう。
 先日何気なく入った古銭店で板垣退助の肖像がある100円札を見て、これがあれば両替でロスすることもないのでは、とふと思った。日本では缶飲料も買えない100円でも外国では結構な価値があることが多い。
 紙幣と硬貨、製造するにはどちらが安いのだろうか。環境には木材を使う紙幣の方が分が悪いのだろうか。そんなことを考えず、1ドル札からあり、かつ世界的に通用する米ドルを持ち歩くのに越したことはないのであるが・・・。

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