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2005年2月12日 (土)

直達特快の無料食事サービス&食堂車
中国鉄路に乗ってみよう!第15話

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上海駅を出発した直達特快は、ホームを過ぎると次第にスピードを上げ始める。
日本の電車王国に慣れている私には、音もなく加速していく客車列車の静穏な走りにも旅情を感じてしまう。
上海駅出発直後の車窓は、住居などの建物が密集が映っていたが、10分もすると緑豊かな郊外の風景となる。
19時発と出発時間は遅かったが、夏の遅い日没のおかげで、暮れゆく上海郊外の景色をしばらく楽しむことが出来た。

出発して10分ぐらい立った頃、女性乗務員がワゴンを押して各コンパートメントに夕食を配り始める。
中国全土の直達特快の中でも夕食サービスがあるのは、この「Z14次」を含め数本しかなく、とても貴重なサービスのある列車に乗れたことに感激する。
私の隣で出発前から横になっていたおばさんも、夕食の匂いを感じたのか起きだした。
配られた夕食は、小さな紙製の箱と銀紙製の容器に入ったお弁当。
紙製の箱の表には、なぜかスウェーデンの高速車両「X2000」の写真と、お皿にのった高級そうな料理。さらには西洋人の料理人の写真があったが、中に入っていたのはそんな高級料理ではなく、「サラダ」「パン」、デザートの「お菓子」に「バナナ」だった。
銀紙の容器はとても暖かく、ふたを開けてみるとご飯に肉と野菜類を煮込んだものがかけられていた。
残念ながら、お茶などの飲み物は配られなかった。

このころから同室の老夫婦と若いお姉さんと少しずつコミュニケーションが出てくる。
同室の3人は、配られた夕食をベットに置いた際に、シーツなどを汚したりしないよう、各自座っている横に部屋備え付けの新聞を敷いたのだが、隣のおばさんは私の横にも親切に敷いてくれた。
この時おばさんに笑顔で何か話しかけられたんだが、当然何を行っているのか解らない。
おばさんは向かいにいた若いお姉さんに、「あなた何か話せないの?」みたいなことを言っているが、お姉さんは首を横に振るばかり・・・
食事がはじまると、私の食欲が旺盛にみえたのか、おばさんから「これも食べなさい」と、サラダが渡され、早速頂いてしまう。
暖かいご飯を食べている私をおばさんは笑顔で見ていたかと思うと、おじさんに何か相談している。
おじさんは近くにあった新聞にペンで、「牛」と書いて私に見せた。
牛肉を使った食事であることを伝えたかったらしい。私が笑って理解したと素振りを見せると、老夫婦とお姉さんは満面の笑みを浮かべ、「牛」の発音を教えてくれ、私もそれを真似したりすることで、コンパートメントが和んできた。
すると今度はそのホットミールをお姉さんが食べないかと差し出してきたが、さすがにメインであるご飯をふたつ食べれるほど私は大食ではないので、こちらは遠慮した。

コンパートメント内に設置されたスピーカーからは常に音楽が流れている。音楽といっても歌謡曲なのだが、これが中国の歌ばかりでなく、なんと日本の演歌も当たり前のように流れてくるからびっくりする。
老夫婦に「日本」「歌」等と書いてみせると、フンフンと笑顔で頷いていた。

そんな言葉の通じないコミュニケーションを楽しみながら食事を一通り終えると、再び廊下にワゴンが現れ、食べ終わった弁当の回収を始める。
弁当が回収されると、もう何もすることがない。老夫婦は車内備え付けの新聞を広げ、お姉さんは扉脇にあるステップを倒し、上段のベットに上がり、読書灯をつけ持参した本を取り出した。
私も本来なら、このコンパートメントで同室になった彼らともう少しコミュニケーションをとってみたかったのだが、この列車の食堂車は絶対に覗いてみたい。
おばあさんも、上海出発時横になっていたこともあり、上段の私が下段に座っていては迷惑かも知れない。
そんな理由もあり、私は鞄から再びデジタルカメラを取り出し、食堂車に向けコンパートメントを出ることにした。

私の乗っている「2号車」から9号車の「食堂車」までは、約200メートル。
途中のコンパートメントは既に扉が閉まり中が見れなくなっている部屋もあるが、概ね満室のようである。
ある中国のWEBニュースサイトの2004/07/26付けの記事では、北京-上海間の「直達特快」の乗車率は99%で、団体や外国人の利用が多いと書かれていたが、実際に列車に乗ってみても高い利用率が確認できる。
また各車両の端には、「トイレ」と「乗務員室」があり、乗務員は2両に一人づつ若い女性が中に座っていた。
2両に一人づつ乗務員がいると言うことは、寝台車が18両連結されたこの「直達特快」では、9名ものこのような乗務員がいることになる。
そのせいなのか女性乗務員は、特に何か仕事があるわけでもなく、皆手持ち無沙汰のようであった。
私が中国語が少しでも話すことが出来たら、色々と会話がしてみたいと思ったが、こればかりは願わぬことである。


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さて「食堂車」についた。時計は19:20だった。
設備としては、4人がけ用のテーブルが10セットあり、さらに車端にはベンチ型のカウンターが設けられている。
天井には液晶テレビが数台吊るされていたが、残念ながら何も映っていない。
10セットあるテーブルのうち、6つは埋まっていたが客と思われるのは2組。あとの4のテーブルは乗務員と思われる人で占領され、弁当らしきものを食べている。
やはり乗客全員に食事が配られる列車で、更に食堂車で何かを食べようと思う客はほとんどいないようである。
私は空いているテーブルに腰掛けると、程なく女性係員が注文を取りに来る。この女性。寝台車の乗務員とは違って少し年季が入っている。とても若いとはいえない・・・・

メニューを見るが、漢字ばかりでとても理解できない。とりあえず「ビール」というと、「ハイネケン?」と返事してくれたので、ビールは理解してくれたようだ。
そのほか何かつまみになりそうなものが欲しいがメニューが読めなくては仕方がない。値段をみて安い品を適当に2品指差した。
すると女性係員は手持ちの伝票に注文したものを書き込み、その伝票に書かれた値段を私に見せ、前金だというジェスチャーを見せる。
この時の値段が残念ながら私の旅行メモに残っていないのだが、確か40元程度だったと記憶している。

テーブルでお金を支払いしばらくすると、先ほどとは違って無愛想な男性係員がカウンター席の奥にある冷蔵庫からハイネケンを取り出し、私のテーブルに置いた。
しかしグラスがない。さすがにハイネケンを瓶のまま飲むのには抵抗があるので、グラスが欲しい旨伝えると、面倒くさそうな顔をしてグラスを持ってきた。この辺はお国柄なのでしょう・・・
さらにしばらくすると、先ほど頼んだ安い品が2品出てきた。出てきた品は大豆を煮たような品と、えらく脂っこく揚げられた魚。
どちらの品も食べられないことはなかったが、美味しいと思える品ではなかった。
言葉が解らないと言うのは、こういうときに悲しい思いをするものだと、再認識してみたりする。

出てきた料理に問題はあったが、食堂車でビールを傾けながら流れ行く車窓を見ているのはとても優雅な気分に浸れる。
車窓と言っても、ほとんど真っ暗でなにも見えないが、時々通過する駅の明かりが見えるだけ、あとは列車の揺れがとても心地よい。
食堂車で過ごす時こそ、もっとも贅沢な列車の旅ではないかと私は思っている。
しかしながらこの列車は良く揺れる。食堂車でグラスにビールを注いでいるから、揺れが大きく感じるのかも知れないが、ずっと最高速度の160キロで走っているのかも知れない。
私の周りのテーブルが空席だったこともあり、手持ちの携帯電話で日本の友人に、食堂車で至福の時を過ごしていることを伝えている時に「無錫」を通過した。

ところがこんな私の至福の時間を邪魔する輩がいた。
その輩とは食堂車のテーブルを4つも占領している乗務員そして食堂車の従業員と思われる人たち。
彼らは寝台車にいる若い女性の乗務員とは違い、中年以上のおじさんたち。
ただテーブルを占領しているだけなら、利用客が少ないこの列車では特に問題ないが、彼らは騒音とも思えるほど大きな声で話すのである。これもお国柄なのだろうか? 
最大9人ものおじさんたちが集り、食堂車は彼らの溜まり場になってしまっている。
時々寝台車の若い女性乗務員が食堂車を通ると、ちょっかいを出しているが、女性乗務員は慣れたもので、笑顔で答え相手にはしていないようだった。
それにしても、本当に寝台車の女性乗務員達はかわいい娘が多い。


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食堂車に来て1時間経った、20:40に食堂車を後にする。
帰り際、厨房がガラス張りで中での調理の様子が丸見えなのに気が付いた。更にその厨房の反対側の通路には写真が何枚か飾られている。
パネルには「東方号 江澤民」と書かれたもの。更には江澤民らしき人がこの食堂車で談話している写真がある。
これらパネルから、この列車の名前「東方号」とは、どうやら江澤民が命名したようだ。
私がこれらの写真を熱心に見ていると、さっきの乗務員の一人が話しかけてきたが、残念ながら言葉が解らなかった。
私的には江澤民が列車を視察している写真よりも「BEST SERVICE TEAM」と題された、寝台車の女性乗務員達の楽しそうな集合写真がとても印象的だった。

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2号車の自分のコンパートメントに戻ると、老夫婦はやはり夢の中・・・
若いお姉さんは起きていて、上段で読書を続けている。
私も上段の自分のベットに腰を落ろし、旅のメモを書き綴って時を過ごす。
時間は21:00.上海を出発して既に2時間経つが、列車はずっと高速で走ったままである。
この後1時間ぐらいして横になったが、列車が一度大きく減速することはあったが、停車はしなかった。
ベットに上がってしまうと外の景色を眺めることも出来ないので、私も眠ることとした。

つづく

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