北京に向けて「直達特快」出発進行!
中国鉄路に乗ってみよう!第14話
いよいよ私の目の前に現れた「直達特快」。
真っ白い車体で、窓周りに青い帯を巻き、プラグドアを装備した車両はとても美しく保たれている。
中国の鉄道車両といえば、少し前まで軍事色のような緑色の車体が一般的だったような記憶があるが、「直達特快」用の車両には、緑色の中国の鉄道車両の面影は一切なく、ヨーロッパの最新鋭の客車のような雰囲気が漂っている。
この客車は「RW25T」と呼ばれる軟臥車(A寝台)で、全長26メートル・最高時速160kmを誇る中国鉄路最新の客車である。(RWは軟臥であることを示している)
列車は2両に1両の割合で扉が開き、号車番号が掲げられ乗車口となっている。
各乗車口には若い女性の客室乗務員が立ちお客を迎える。
私に指定された2号車は、後から2両目の車両。客室乗務員に切符を見せ、タラップを踏みいよいよ車内へと乗り込んだ。
中国鉄路の軟臥(A寝台)は全てコンパートメント構造。
1部屋は上・下段ベットが向かい合わせの4人部屋で、この「RW25T」には、1両に9部屋のコンパートメントがあり、定員は36名となっている。
車内の通路は絨毯、窓にはレースのカーテンがひかれ、とても清潔な印象である。同じ夜行列車でも日本の衰退していくブルートレインとは比べ物にならないぐらい綺麗である。
さて、自分の部屋は?
と思いコンパートメントの扉付近にあると思われるベット番号を探して廊下を歩くが、扉にはコンパートメント番号しか書かれていない。
私の切符には、「2車2号上段」と書いてある。
もしかして、「2号」とはベット番号でなく、コンパートメント番号なのでは?と思い、「2」と書かれたコンパートメントに一人でいた中年の男性に私の切符を見せ「ここで良い?」と日本語を交じりで素振りをしてみる。
私が中国語が話せないことを悟った彼は、切符を見て「隣の部屋だ」と今度は中国語交じりのジェスチャーで教えてくれる。
ところが彼の指差した「1」のコンパートメントを覗いて見ると、部屋の中には既に老夫婦が2組と若いお姉さんが楽しそうに談話している。ひとつのコンパートメントの定員は4人のはずだが、既に定員を上回る5人が「1」のコンパートメントにいて、私が入れるような雰囲気ではない。
私は再び「2」のコンパートメントに戻り、おじさんに「本当に隣の部屋?」と、ある意味助けを求めた。
するとおじさんは「1」のコンパートメントまで足を運んでくれ、部屋の窓の上に貼ってあったベッド番号「2号」を指差し、「貴方はここ」と言う風にベットを示してくれた。
この光景を見て「1」ノコンパートメントにいた5人の人たちは、私が今夜同室で中国語の通じない人間だと理解してくれたようだが座れる場所がない。
困った素振りをすると「ここに座りなさい」と下段ベットの通路側のスペースを空けてくれた。
私はしばらくその指定された場所に座っていたのだが、その間ほか5人は私に構うことなく、談話に花を咲かせている。
この定員オーバーは何故なんだろう?と思いながら、出発時間までまだ15分以上あったので、鞄からデジタルカメラとビデオカメラを取り出し、列車の外に出ることにした。
外では列車に乗り込む人たちを中心にスナップを撮ったり、ビデオを回してみた。
またホームに置いてあった台車にカメラを置き、セルフタイマーをセットし「直達特快」をバックに記念写真を写してみたが、うまい構図にはならない。こればかりはひとり旅ゆえのどうしようもない・・・
乗車車両である「2号車」付近での撮影を一通り終え、今度は列車の前方に向かって歩いてみる。
3号車、4号車、5号車・・・。列車に沿ってホームを歩いてみると、この「直達特快」がとても長いことに改めて気付かされる。
8号車まで途中全てが軟臥(A寝台)であったが、9号車が近づいてくると、その車両は他とは少し外見が違うことが見て取れる。
白い車体で窓周りに青い帯を巻いているのは他の車両と同じだが、出入り口になぜか柵があるのと窓の大きさが違う。車体に書かれている形式も他の軟臥(A寝台)を表す「RW」ではなく、「CA」と書かれている。
もう少し近づいて見てみるとカーテン越しに見える車内にはテーブルが並んでいる。そう「食堂車」である。
日本の鉄道では新幹線等によるスピードアップの実現や車内販売や駅弁などの充実により、「食堂車」は北海道行きのブルートレイン数本でしか経験することが出来なくなってしまったが、外国の鉄道では減少傾向ながらもまだまだ健在で、「食堂車」は私が外国の鉄道に乗る際の楽しみの一つである。
実はこの「直達特快Z14次」では、19往復存在する直達特快の中で3往復だけで実施される軽食サービスが存在すると聞いている。
更に上海を19:00に出て翌朝6:58には北京に到着してしまうダイヤでは、食堂車の存在意味がほとんどないと思われ、連結がされていないのではと半分諦めていたのだから、これほど嬉しいことはない。
「食堂車」には他の車両にはないエンブレムも掲げられていた。
「東方号 ORIENT」と大きく書かれた文字の上には、5つの星印と上海・北京の文字。
上海と北京を結ぶ5本の直達特快の中でも、この北京行の「Z14」と上海行の「Z13」だけには、「東方号」という別の名称が付いているようだ。
乗車口に立っている女性乗務員の制服も、向かいのホームに止まっている別の「直達特快」とは別のものである。
なぜこの列車にだけ名称が存在するのか、乗務員の制服がなぜ違うのか?その理由は私には解らない。
9号車の「食堂車」まで来たところで、自分の車両である2号車から既に200メートル歩いてきたことになる。
「食堂車」が編成の真ん中に連結されていると考えると先頭はあと200メートルも先のはずである。
昨日、上海駅近くの陸橋の上から撮影したこの「Z14次」は、18両もの客車を連ねていたのを思い出す。
1両が26メートルなので、その全長は実に460メートルにもなる。更に先頭には2両連結式のディーゼル機関車が構えているわけで、機関車を入れた列車全体の全長は500メートルを超えると思われる。
日本の新幹線「のぞみ」の全長は、16両編成で約400メートルなので、それよりも100メートルも長いことになる。
このまま先頭まで行っても「2号車」に戻るのに時間もかかり、先頭の機関車を写真に収めるのも難しいだろうと考え、自分の車両に引き返すことにした。
「2号車」に戻り、再び乗り込もうとすると入り口に立つ若い女性の乗務員が中国語で話しかけられる。
さっき切符を見せたのだが、さすがに顔パスは利かなかったらしい、再び切符を見せ車内に入った。
コンパートメントに戻ると、先ほどまでの談話は既に終わっていて、老夫婦1組と二十歳前後の女性の3人となっていた。
私がさっき座っていた座席兼下段ベットでは既におばさんが横になっていたが、私が戻ってきたことを察すると、足を曲げ座れる分だけのスペースを空けてくれた。
なんとも居心地が良いとは言いにくい状況である・・・
程なく出発時間の19:00.
ホームに発車ベルが鳴り響くわけでなく、車内放送があるわけでなく、列車は北京に向け定刻に動き出した。
私は通路にあった簡易イスを引き出して座り、上海の街に別れを告げた。
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