新型ロマンスカーVSE車登場!!

<報道公開されたVSE車 写真提供:高田知彦様>
2004年11月29日。小田急電鉄が新型ロマンスカー(50000系VSE)の発表を行われました。
計画発表時から話題を呼んでいた車両がついにプレス発表となり、その模様はテレビでも公開されました。
この新しいロマンスカーVSEは、ここ10数年「小田急ロマンスカー」が失いかけていた「スタイル」「車内サービス」を復活させ、減少傾向にある箱根への観光客誘致を狙った車両と聞いています
私はプレス発表をインターネットで拝見し、そのスタイルにまず驚いてしまいました。
カッコイイのか、そうでないのか 判断に迷ってしまうデザインですが、とても気合の入った車両であることは、誰の目でみても異論はないでしょう。
早く実物を見てみたいし、乗ってみたいと思わせる車両であることだけは間違えないと思います。
このVSE発表を機会として、小田急ロマンスカーの歴史等を少し紹介してみたいと思います。
<小田急ロマンスカーの登場>
東京新宿から神奈川県小田原市を結んでいた小田急電鉄が、戦後の観光ブームを機に箱根登山鉄道の「箱根湯本駅」に直通電車を走らせたのが、昭和25(1950)年8月1日。
直通運転による効果は大きく、小田急を使っての箱根への観光客が、倍増したとのこと。
この効果を更にあげるために登場したのが小田急ロマンスカー。
<初代ロマンスカー>
初代のロマンスカーの登場は昭和32(1957)年夏。
まだ茶色い電車が沢山走っていた時代に、真っ赤な流線型のスマートな車体は異彩を放ち、人々の熱い注目を集めた。3000系(SE車)です。
注目を浴びたのは、スタイルだけでなく走行性能も当時の電車として最高のものであり、国鉄からも関心の目で見られ、私鉄車両ながら国鉄線上でテスト走行が行われました。
テストでは東海道本線を最高時速145kmで走行。その後の「特急こだま」や「新幹線」開発の基となったと言われています。
<展望室登場>
この後ロマンスカーは、運転席を2階に上げ前面展望を可能とした2代目のNSE車が昭和38年に登場。
前面に展望席を設置したNSE車は、ロマンスカー主役として沿線の子供たちからの憧れのまなざしが注がれました。
私もそんな子供の一人であり、今日列車をはじめとする乗り物に興味があるのも、この2代目ロマンスカーNSE車の影響が強いものと考えています。
昭和55年に登場した3代目(LSE)、昭和62年に登場した4代目(HISE)までは、この前面展望スタイルを保っていました。
<スタイルとサービスの変化>
しかしながら平成2年に登場した5代目(RSE)は、JR東海との相互乗り入れによる共通車両設計から、運転席を2階に上げた前面展望は廃止されたほか、SE車からずっと継承されてきた連接構造にも終止符が打たれ、ロマンスカーのスタイルが変化し始めます
またこのRSE登場時に、ロマンスカーの特徴的サービスであった「走る喫茶室」が姿を消してしまいました。
「走る喫茶室」は、客室乗務員(車掌ではない)が、乗客におしぼりとメニューを配り、乗客のオーダーに応じ、ガラスのコップでコーヒー・紅茶などが提供されると言う、車内全体が喫茶店みたいな貴重なサービスでしたが、RSEの登場を記に、新幹線やJRの特急と同じスタイルのワゴンによる車内販売へとサービスが変化してしまいました。
<観光以外にも求められるロマンスカーの需要>
小田急沿線は戦後宅地化が進み、都心への通勤通学客が急増しました。
ロマンスカーも変化を求められるようになった。箱根への観光客相手だけではなく、沿線住民への着席を保証する特急列車への需要の対応。
特に夕方以降は、新宿から町田、本厚木方面への帰宅の足として多くのサラリーマンがロマンスカーを求めました。
しかしながら元々観光用として箱根乗り入れを前提に設計されたロマンスカーは、通勤電車に比べ編成が短く、座席の供給量も少なかったのです。
これらの新しい観光ではない沿線住民の着席への需要には、ロマンスカーを印象付ける前面展望は必要なく、座席数の大幅アップが求められました。
この新しい需要に対応したロマンスカーとして登場したのが、30000系(EXE)です。
30000系(EXE)は、先の理由から座席増に重点をおいた車両となり、その結果、外観も従来のロマンスカーとは大きく異なることになり、ロマンスカーと呼ばれる観光用の特別列車というより、一般的な特急車両となってしまいました。
小田急もこの30000系(EXE)が、従来のロマンスカーとは別の意味合いの車両であることを認めるかのように、車両の愛称には、昭和32年登場の3000系SE車から継承されてきた「*SE」という愛称を与えませんでした。
またそのスタイルには観光のイメージも掴みにくかったのか、箱根への誘致のCMにも近年は30000系(EXE)ではなく、2世代前の10000系(HISE)が使われるようになりました。
沿線の宅地化が進み、複々線が推進され、JR東日本の湘南新宿ラインの大増発による旅客獲得争いの激化など、小田急の取り巻く環境が以前とは大きく変化してしまった現在、ロマンスカーに以前のような特別な車両を求めるのは、もはや時代遅れと思っていた矢先、バリアフリーへの対応が構造上困難なことから、まだ登場して16年しかたっていない10000系(HISE)を廃車とし、これに変わる新しい特急車両が必要となりました。
同時に減少傾向にあった箱根への観光客を取り戻すべき、小田急ロマンスカーの名に恥じない魅力ある車両設計が計画され、この時発表されたのが、30000系VSE車だったのです。
30000系VSE車により、小田急ロマンスカーの伝統であった「前面展望席」「連接式車両構造」「走る喫茶室(復活名称は別)」が復活。
初代ロマンスカーSE車以来の話題と期待を一心に背負い、2005年3月の営業開始を目指しています。
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確かに、最近の小田急の通勤型は、キモイ感じのデザインが多いですね。9000系の前面とか好きだったのに。
VSEはHISEの代替なのですか。ちょっともったいない感じがしますね。
デザインは相当頑張っている感じがします。でも曲面が微妙に洗練されていないので一見おもちゃぽく見えてしまうのかも知れませんね。
Primera
投稿: primera | 2004年12月10日 (金) 11時29分
こんばんわ。
最近の小田急の車両は都会的な匿名性?
みたいのを売りにしたデザインが多いですね。
最近の通勤車の3000系、最初見たときキモイと
思いましたが実物走り出すと、
あ、小田急だ
というような見えない個性が感じられていいです。
もっとも、昔からのっぺらぼうみたいなデザインが多かったわけですが・・・
投稿: 4563 | 2004年12月 8日 (水) 20時49分